6年ぶりの新刊
時雨出版から6年ぶりに新しい本が出版される。時雨出版代表・温野まきさんからそう聞いた時、思わず胸が高まりました。まきさんとは20年来、お姉さんのように慕ってお付き合いさせていただいている間柄。「どんな本が出版されるのですか?」と聞いてみたら、きっと教えてくれたでしょう。でも、私はあえて聞きませんでした。出版当日まで私も一読者として、心待ちにしたかったからです。そして出版された「ある、りんご農園の一年」は思いも寄らなかった写真集。しかも、奇跡のリンゴの木村秋則さんの農園を木村さんの次女・木村江利さんが撮影し、文章を書いている、というのですから、ああ、これはもうまきさんにしか出版できない本だ、と納得してしまいました。まきさんもまた、かつては季刊誌「自然栽培」の編集長として、2012年から木村秋則さんの農園、そして木村さんご家族を傍から見続けていた人の一人です。
手元にあると癒される写真集
僭越ながら私も十数年前から、いつか暮らしの写真集など出せたらいいな、と思っていました。でももし出版するなら、手元に置いてあるだけで元氣になったり癒される、そんな本でありたい、なんて思っていて、そのハードルの高さからとてもじゃないですが実現する氣にはなりませんでした。そして、「ある、りんご農園の一年」を初めて手に取って、パラパラとめくったそれだけで、「これだ」と思ったのです。手元にあるだけで、パラパラとページをめくるだけで、心がほどけていき、なぜかはわからないけれども生きているって素晴らしいなぁ、という幸福感のようなものが湧き上がってくる、この世の全ての命のありがたさに胸が熱くなる、「ある、りんご農園の一年」にはそんな不思議な力があります。木村秋則さんは自然栽培を広めた方として知られており、もはやオーガニック好きな人の間では知らない人のいない有名人ですね。その有名人木村さんが被写体として登場しますが、もしこれが「有名人・木村さん」ではなく、「一農家のおじさん」だったとしても、写真集としてきっと人氣が出るだろう。そう思えるような、写真自体が持つ魅力に溢れています。素人の方が撮られた写真とは思えないくらいの、いえ素人の方だからこそ撮れた、家族と日常の自然そのままの姿なのでしょう。
「奇跡のリンゴ」の壮大な記録集
木村秋則さんは、世界で初めて無農薬・無肥料でのりんご栽培に成功した農家さんです。そのりんごはやがて「奇跡のりんご」とも呼ばれ、本や映画にもなったほどで、現在ほとんど手に入れることができないぐらい人氣です。しかしながら、りんごの自然栽培を成功させるまでには、想像を絶するほどの挫折と貧困にあえぐ苦しい日々があり、木村秋則さんと奥様の美千子さんとの間に生まれた次女の木村江利さんは、その姿をずっとそばで見続けてきました。江利さんにしか撮れなかった、書くことができなかった、家族と畑の姿。それらを10年に及ぶ膨大な写真を記録に収め、1冊に創り上げたのが「ある、りんご園の一年」です。
「正しさも答えも無く一年間ただ取り組み続ける。 かなしみ、いつくしみ、畑とともに生き続ける。」木村江利さんの言葉は、奇跡は一日一日の積み重ねである、ということを教えてくれます。
時雨出版 温野まきさんより
時雨出版、6年ぶりの新刊が発売されました。
本書を制作することになったきっかけは、2019年秋、青森県弘前市でリンゴを自然栽培している木村秋則さんの次女である江利(えり)さんから、「父と母が共に頑張ったからこそ、今の畑とりんごの木があるという事実を写真集として残したい」と、相談されたことに始まります。
江利さんは、2015年からiPhoneで農園と父母の姿を撮影し始め、近年はInstagramにも投稿しています。その写真と文章が素晴らしく、とても好きだったので、「やりましょう」と即答しましたが、結果的にそこから6年近くかかりました。
自然という “命のつながり” のなかで、
ただただ日々、畑に向かう父。
呼応する、りんごの木々。
光と陰
絶望と希望
永遠の一瞬
木村江利にしか撮れなかった、
書くことができなかった、家族と畑のすがた。
10年に及ぶ膨大な写真と記録から綴られた、
「ある、りんご園の一年」。
人と人、自然と人が、争わず、調和する世界であってほしいと心から願います。読んでいただけたら嬉しいです。
一般書店で販売しない理由
ISBN(国際標準図書番号)を取得していますが、一般書店で販売せずに、直接、みなさまに本をお届けします。なぜ一般の書店で販売しないかというと、断裁される本があまりにも多いからです。毎年、書店に並ぶ雑誌や本の30〜40%が断裁されます。紙はパルプ(木)でできています。日本で使われるパルプのうち70%は、海外の森林を伐採して輸入されています。断裁されたあとは、リサイクルされますが、1本の木が生長する年月を考えると、当たり前のように無駄に断裁されていいとは思えません。こうした現状を少しでも変えたいので、読みたい人の手に直接届く、通販を中心に書籍販売を行うことにしました。
環境に配慮した書籍
本書は、リサイクルの工程に配慮して、カバーにPP加工をせず、ニス加工をしています。PP(ポリプロピレン)は、一見丈夫ですが、劣化すると手で揉んだだけで粉々になります。いま、海洋汚染で問題になっているマイクロプラスチック。その主なプラスチックの一つがポリプロピレンです。ニス加工はPP加工ほどの強度はありませんので、使用しているうちに表紙が擦れて白くなりますが、紙の風合いと経年による味わいをお楽しみください。
こちらもおすすめです
同じく時雨出版の「最初に読む料理本」も是非、読んでいただきたい1冊です。
木村江利さんについて
写真・文・題字 木村江利(きむら えり)
青森県弘前市生まれ。自然栽培りんご農家・木村秋則と美千子の次女。2005年からご実家である自然栽培りんご園に従事し、2012年からは父と二人で農園を営んでいらっしゃいます。
*撮影はiPhoneを使用。そのままの景色や姿が映し出されています。
SPEC仕様
「ある、りんご園の一年」
*写真・文・題字 木村江利
*装丁・デザイン・構成/山下リサ(niwa no niwa)
*構成・編集/温野まき
*四六判変形
*320ページページ
*全ページカラー
*時雨出版
*本書は、リサイクルの工程に配慮して、カバーにPP加工をせず、ニス加工をしています。PP(ポリプロピレン)は一見丈夫ですが、劣化すると手で揉んだだけで粉々になります。
いま、海洋汚染で問題になっているマイクロプラスチック。その主なプラスチックの一つがポリプロピレンです。ニス加工はPP加工ほどの強度はありませんので、使用しているうちに表紙が擦れて白くなりますが、紙の風合いと経年による味わいをお楽しみください。




















































